そいつぁつらいぜ分室 〜駐在員細田の語学学習〜

ドイツ駐在員細田がドイツで語学を学びます。主に英語とドイツ語の学習記録。本家はこちら→http://o81hosoda.hatenablog.com/

副業翻訳家にチャレンジ 1年で感じたメリット・デメリット

こんにちは、細田です。
昨年の2月末から翻訳の仕事を細々と請負い始めました。1年くらい経ったのでここらで記事にしてみようと思います。

1年やってみた感想から言うと、翻訳を副業とすることにはメリットとデメリットが半々ぐらいあるように感じました。外国語学習の成果物としてアマチュア副業にチャレンジしたいと思っている方にはぜひ参考にしていただきたいと思います。

仕事を受注するに至った経緯や感想などは後半に回しました。あくまで個人の事例になりますので、体験談程度にお願いします。

副業翻訳を始めようと思ったわけ

大学生ぐらいのときから、翻訳家に対するぼんやりした憧れがあったのは確かです。中高生時分に英語が得意だったので、英語をダイレクトに使った仕事がしたいという薄ーい気持ちの現れだったかもしれません。
が、今回はもう少し実利的な側面が自分の背中を後押ししました。

 

①お金が欲しい
本業とは別にお金を生み出す手段が欲しいと常々思っていました。
時間対効果や本業との並行を考えると株式の運用を一番最初に思いつくのですが、株をやるには元手も知識も心もとない。
そこで、まずは自分の持っている知識を資本に小銭稼ぎができればよいと考えた次第です。

 

 ②学習の成果を試したい
まだまだ道半ばですが、英語を使うことにだいぶ自信が出てきました。
そこで、もちろんプロには程遠いのは承知の上で、自分の語学力がどの程度世に求められているのか、自分の語学力にどの程度の価値が付くのか、稼げる一線を越えることができるのか、試してみたかったのです。

 

③学習の材料にしたい
英文和訳は非常によい精読の勉強になります。
大学受験生だった頃やには課題文の全和訳をして理解度を上げていたので、その経験からも、和訳を通じて語学力をアップさせられるだろうと考えていました。 

 

結果から言うと、①~③のすべての目的は果たされましたが、メリットとデメリットがありました。仕事を受注するまでの経緯を語りたい気持ちは置いておいて、まずここを整理したいと思います。

 

副業翻訳家のメリット

①小金は稼げる
翻訳の内容とスピード次第ですが、作業時間と対価から換算して時給1500円くらいにはなります。(実際は、完成日本語1文字あたりの評価です。原文1wordあたりで評価する場合も多いようです)
順調に受注できれば月30000円くらい、調子のいい時は50000~70000円くらい稼げました。この額をどう考えるか次第だと思います。
ちなみに、私は海外スポーツ記事を担当しているのですが、例えば特許や法務関係であれば、この2~3倍くらいの評価額はつくのではないでしょうか。
時給4000円ぐらいになれば、もう少し割の良い仕事になるかもしれません。

 

②勉強になる
知らない単語や熟語、あまり見慣れない表現を知り、ニュアンスを考えるよい機会になります。
文法書や辞書と首っ引きになりながら自然な日本語を考えるのもオツなものです。
SVLで言うとレベル10以上の単語もよく出てくるので、自分の記憶を確認するチャンスにもなります。

(SVLについては過去記事を参照してください) 

hosoda-english.hatenablog.com

 ③文章力がつく
翻訳とは、英語の逐語訳(文章を品詞に分解してそれぞれに対応する単語を当てた機械的な訳)ではありません。
自然な日本語にするために語順や語の運用を変える必要があることもままありますし、その変更によってできた文章が原文のニュアンスから外れないように考慮する必要もあります。
この思考過程が自分の文章力を醸成してくれる感覚があります。

 

副業翻訳家のデメリット

①時間がかかる
とにかく時間を持っていかれます。
時間を削ってお金を得ている感じが、本業よりも強く感じられます。
余暇に使うお金が欲しかったのに余暇に充てる時間が減ってしまうという見事な矛盾を体感できます。
株のように漬けておけば価値が増減するわけではなく、手を動かさない限り対価が得られないので、これは副業翻訳家の宿命ともいえそうです。

 

②語学に割ける時間も減る
自分が一瞬で理解できる簡単な英文も日本語に直さなくてはいけません。
英語のまま理解できる文章も、日本語に直すとなると意外な苦戦を強いられることもあります。
こういう時間は、英語の勉強としては密度が非常に低いです。
単語やフレーズを覚える、会話の練習をする、多読をする、こういう勉強をする時間が翻訳作業によってどんどん失われていきます。

 

語学を続けていくためには、副業翻訳のメリットとデメリットを理解し、ほどほどのお付き合いをするのがよさそうです。

 

翻訳の業務受注までの体験談

翻訳業は、非経験者の参入障壁が非常に高い業界に思われます。応募条件に「経験○年以上」と書かれていることがほとんどです。
もちろん価格帯を選ばなければ業務を受注することはできますが、安い業務は見事に価格崩壊を起こしているため、インテリジェントな働き方を目指す方にはあまりお勧めしません。
なので、なんとかして最低限度くらいの業務をこなして「経験年」のアリバイを作ることが大事になると思います。

私の場合、アリバイ作りの糸口になったのはクラウドソーシングサイトでした。
conyac」というクラウド翻訳サイト(単価が激安なのでおすすめはしません)と、「クラウドワークス」という総合クラウドソーシングサービスに登録し、案件に応募しているうちにいくつかの案件を受注することができました。

単発の案件でわずかばかりの報酬をもらうこともありましたが、そのうち運良く継続案件に応募することができました。その発注先と現在まで仕事をさせてもらっています。

他にもいくつか単発の案件を受注しましたが、案件に応募し続けるのにも時間がかかります。
新着案件のチェック、応募(毎回略歴などのメッセージを作らなくてはいけない)、選考、試訳のやりとりなど、1件受注するのにかなりの時間がかかりました
その割に報酬は成果物の文字数で評価されるため、ネット記事一本程度の長さの案件だと、本当に小金稼ぎ程度にしかなりません。ですから、「案件応募しまくりフェーズ」が長く続くとモチベーションは低下するでしょう。

副業翻訳を続けられるかどうかは、このフェーズをいかに早くクリアするかにかかっている気がします。私の場合、運良く早めにこの段階をクリアできたのが副業へのモチベーションを維持できた要因だと思いました。

 

 翻訳を1年やってみた感想

 締め切りさえ守れればいつ作業してもよいので、本業と並行しやすい副業だと感じました。
自分は専ら家族が寝た後の平日夜半にやっているのですが、早朝や休日に作業しても問題ありません。

能力的には、だいたい英検準1級とかTOEIC900点ぐらいの英語力があれば、効率よく翻訳業を遂行できるのではないでしょうか。
即時的な対応力の求められる通訳とは違って、翻訳は調べる時間を(理論上は)無限に取ることができます。(理論上は)文法さえわかっていれば、辞書とにらめっこすれば翻訳することができるわけです。知らない単語や熟語があっても何ら問題はありません。
むしろ、自分の知らない言葉(や人名・地名・団体名など)に気づくことができ、詳細に調べることができる能力が求められている気がします。

ただし、細かなニュアンスが大きな問題になる法的文書について、私程度のアマチュア翻訳家が責任を負えるかは微妙です。
なんとなく英語学習の成果を試したいなーと思ったら、たとえばネット記事やスライド翻訳などの仕事を請け負うところから始めてみるとよいかもしれません。

 

参考図書

翻訳は専門ではないので、まずはプロらしい翻訳ができるようになるべく気をつけました。
英語が読めても、平易で意味の通る日本語にできないとダメですし、1文の中に存在するロジックまで含めて、原文のニュアンスは変えてはいけません。それでは、どうすればよい翻訳ができるか? まだまだ学習中ですが、初期には以下の本を参考にしました。

 

 

まだ読んでいる最中ですが、「英文解釈考」は、英文から感じられる「ニュアンス」を理解する一助になると思います。英文読解のための重要な一冊です。

今後

もう少し単価が上がればよいかなーと思っています。現状の単価と作業スピードだと、時給1500円くらいにしかなりません。余暇時間を削って仕事をしているので、これだとまだ割に合っていない気がしますね。
ただ、継続業務をもらえているので、今回受注できたクライアントとしばらくお付き合いしてみようと思っています。
一方で、英語そのものの勉強ももっとしないといけません。学習者としては、小金を稼ぐことだけに集中してしまってはいけません。

自分のライフスタイルに合った分量を模索しながら、収入の足しにできればいいかなーという感じですね。